大会長挨拶
「振動子研究のその先へ」
Beyond to the scope of oscillator research
富山大会の開催にあたり
第31回日本時間生物学会学術大会およびそのプレイベントとして国際ジョイントシンポジウム「Molecular Basis of Rhythms from Plants to Primates」を富山国際会議場において開催いたします。初日(11月15日)に開催される国際ジョイントシンポジウムは、スイス・フリブール大学Urs Albrecht先生や台湾の時間生物学研究グループから参加のご連絡を頂き、これを受けて企画したものです。10演題を超えるカッティングエッジな内容を、英語で拝聴することのできる稀有な機会です。特に将来国際学会で発表をしたいと考えている学生のみなさんには勉強になると思います。会員・非会員を問わずこちらの参加は自由ですので、ぜひ奮ってご参加ください。16日から2日間予定で開催される第31回日本時間生物学会学術大会については、兼ねてからお知らせしている通りですが、初日には米国オレゴンよりCharles Allen先生をお迎えし、視交叉上核の生理学についてレクチャーをいただく予定です。また、2日目には、昨年急逝された近藤孝男先生の追悼メモリアル講演を開催する予定です。その他シンポジウムの概要もほぼ決まりましたので、詳しくは大会Webサイト「プログラム」をご参照ください。
さて、日本時間生物学会は、1994年に基礎生物学系の生物リズム研究会と臨床医学系の臨床時間生物学研究会が合流して始まり、前身から考えると40年の歴史のある学術集会です。細菌・植物・昆虫からヒトにいたる生物を対象とし、時計遺伝子の転写翻訳から、分子のリン酸化、イオンや代謝リズムとの連関、行動科学、さらにはフィールドワークを含む生態学的な研究など多種多様な研究の最新の成果発表が行われます。富山大会では、時間生物学が将来どのようなかたちでわれわれの社会にインパクトを与えるのか、社会実装という観点のシンポジウムも企画しました。
基礎科学の価値が何かと問われる昨今ではありますが、時間生物学会は基礎生命科学や理論生物学からヒトの寝起きのリズムや投薬時間戦略までを繋げる素晴らしい学術フォーラムであります。時間生物学においては、ノーベル賞研究に結び付いた時計遺伝子の研究や、分子レベルの振動子研究がハイレベルな学術誌に数多く掲載されるなど、重要な柱であることは言うまでもありませんが、狭量的な1つの生物学専門分野に止まらず、分野横断的に広くその価値を共有できるようにという思いから、「振動子研究のその先へ」を富山大会のテーマに掲げさせていただきました。「その先」の意味は参加者の皆様の解釈次第です。会員の英知の結集により、大会が時間生物学の新展開に繋がるマイルストーンになることを祈念しております。挑戦的な最新の研究成果を存分に発表頂けるよう準備を進めてまいりますので、ぜひ富山でお会いしましょう。
第31回大会大会長 富山大学 池田真行